2014-03-08
WEB版産経新聞から
外国人労働者受け入れ拡大 酒井明氏「選別的に受け入れるべき」、小野五郎氏「国民のこと考えて検討を」
2014.3.7 12:48 (1/5ページ)
東日本大震災の復興需要で被災地を中心に建設労働者の不足が深刻になっており、6年後の東京五輪開催に向けた人手不足も予想されることから、政府は外国人労働者の受け入れ拡大を検討している。現在、建設業界では「外国人技能実習制度」で主に途上国の若手労働者が最長で3年、滞日し就労しているが、この期間延長などが焦点になる。外国人労働者受け入れ拡大の是非について、千葉科学大の酒井明教授と、埼玉大の小野五郎名誉教授に見解を聞いた。(溝上健良)
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≪酒井明氏≫
■永住への道を用意すべきだ
−−政府による外国人労働者の受け入れ拡大方針をどうみるか
「これからの日本の国家像をどう描くかという問題だ。産業のトップランナーで品格ある国家であり続けるためには、女性や高齢者労働力の活用は必要だが、それにも限界がある。選別的に外国人を受け入れていくべきで、将来は人口の3〜5%程度まで増やしていいだろう」
−−技能実習制度の受け入れ期間が最長3年から5年に延長される方向だ
「延ばすのはいいが、それだけでなく家族も含めて定住、永住への道をつくるべきだ。3年間ないし5年間、日本でトラブルなく働いた上に残留を希望する人には、日本語能力も含めた技能試験を課し、一定水準に達すれば、永住への道を用意する必要がある。そのような道があることで、帰国を前にした逃亡や不法滞在もなくなるはず」
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酒井明・千葉科学大教授
−−帰化させるということか
「帰化して日本人になってもらってもいいし、外国人のまま永住権を持つという形でもよく、両方ありうる。日本でせっかく学んだ技術を本国では生かす場がないということも考えられ、そうした労働者の日本への再入国は認めるよう、ぜひ検討してほしい。彼らには日本での実績があるのだから」
−−教育など社会的なコストも含めて、外国人労働力は割安といえるか
「日本人も外国人も労働は等価値であり、日本人と同等に扱う必要がある。社会的コストについては外国人が来て犯罪が増えたなどともいわれるが、実際の犯罪率は日本人も外国人もさほど変わらない。外国人労働者を迎えるとは、モノではなく人間を受け入れること。不要になったら捨てるというわけにはいかず、そこは慎重に考える必要がある。家族の福祉などを含めた社会的コストもあわせて、この問題は考えねばならない」
−−外国人労働者の家族も来日すれば日本語教育が問題となる
「彼らが日本の社会にとけ込めるかどうかは日本語能力にかかっている。外国人に日本語を教えられる教師を学校に十分に配置する費用は、公的機関が負担すべきだろう。万全の態勢が不可欠だ」
−−今回は建設業界の人手不足の緩和策として外国人労働者の受け入れ拡大が検討されているが、少子高齢化が進めばさらに必要性が増すか
「人口が減っていく社会に活力は生まれない。少子化対策などで人口減を食い止めるには限界があり、基本的には日本人が国を担うべきではあるが、外国人労働力を入れて彼らの活力を借りるという視点も必要になってくる。技術革新や女性・高齢者の活用で労働力はある程度カバーできるとはいえ、外国人も受け入れるべきで、『外国人庁』が必要になるかもしれない」
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≪小野五郎氏≫
■「共生」でなく「同化」が必要
−−受け入れ拡大方針をどうみる
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